サステナビリティ 社会
人的資本に対する取り組み
①経営戦略と連動した人材戦略
エプコグループは、パーパスとして「住まいと暮らし、環境を支える」をミッションに掲げ、住宅のライフサイクル全般に関わる3つのサービス(設計、メンテナンス及び再エネサービス)を提供しております。当該サービスはいずれもソフトサービスが中心であり、資本集約型産業ではなく知識・労働集約型産業であることから、当社グループにおけるもっとも重要な価値創造の源泉は人的資本であります。
そして、当社グループの主たる事業領域である住宅・建設業界は、日本をはじめとする先進国で少子高齢化が進む中、デジタル技術を活用したイノベーションによる生産性向上及び世界的な課題である脱炭素社会の実現を目指すことが求められております。当社グループが持続的に企業価値を向上させるためには、社会的なニーズに応える経営戦略と表裏一体で、その実現を支える人材戦略を策定し、実行することが不可欠と捉えております。
また、当社グループは2025年2月に「中期経営計画(2025-2027)~変化への挑戦【第1フェーズ】~」を策定いたしました。本中期経営計画では、再エネ領域において再エネ設備の普及拡大で売上を増加させ、住宅領域においてDXによる生産性向上で利益率を向上させることを目指しております。また、第2フェーズ(2028年~2030年)にむけて、第3の事業の柱を創出し、①住宅領域、②再エネ領域、③新規事業領域の3本柱で事業成長を果たしてまいります。この計画を達成するための人材戦略として、先に掲げた3つの事業領域での人材ポートフォリオの転換とダイバーシティ・イノベーションに取り組んでまいります。

②人材登用方針
a.エプコグループが求める人材像
当社グループは「住まいと暮らし、環境を支える」という当社グループのミッションおよび中期経営計画の実現に向け、下記に掲げる当社グループが求める人材像を定義しております。
エプコグループの人材像
- 当社グループ中期経営計画の実現に向けリーダーシップを発揮できる人材
- 主体的に学び、専門性を身に着け、新しいことに挑戦できる人材
- 常識を疑い、革新を起こせる人
b.人材ポートフォリオの転換
当社グループは中期経営計画に基づき、成長事業への人材シフトを行ってまいります。事業領域別の注力テーマと施策は以下の通りです。
再エネ領域
再エネサービスにおけるエプコグループ各社のさらなる連携強化を目的として、2025年より再エネ事業本部を新設しました。
また、通常の配置転換に加え、グループ会社への出向公募制度を活用し、エプコグループで働く従業員に等しく成長領域である再エネ領域での就業機会を提供しております。今後も計画的に再エネ領域に携わる人員転換を図ってまいります。
住宅領域
住宅領域においては、DXによる労働生産性の革新的な向上を目指してまいります。祖業である設計サービスにおいては、「D-TECH2.0プロジェクト」を始動し、既存業務を3分の1の人員で遂行することを目標とし、業務自動化・自動作図/検図・クラウド化を進めることで省力化・効率化を図ります。
それに伴いより専門性の高い人材を育成し、業務の高度化を進めるとともに成長分野(再エネ、BIM、火災保険関連、施工技術者等)への人材配転を行ってまいります。
また、メンテナンスサービスにおいては、既存のメンテナンス業務の効率化をDXで実現し、既存業務人員については、より付加価値の高い業務設計や家歴データ活用ができるプロフェッショナル人材として育成することと、新規事業領域(再エネ、火災保険関連等)へのシフトを実現してまいります。
新規事業領域
当社グループは、エネルギー領域、住宅領域に加えて、新規事業領域で第3の事業の柱を創出するため、火災保険関連事業、非住宅BIM事業、データ活用事業などの新サービスを検討しております。
特に火災保険関連事業においては、各事業部門から横断的にメンバーを募り、新サービスの立ち上げに向けたプロジェクトを開始しております。今後はプロジェクトの進行に合わせて、対象者に対する教育研修の実施や損害保険登録鑑定人などの資格取得の推進を図り人員を配置していく方針です。
c.ダイバーシティ・イノベーションの推進
当社グループの組織の特徴は、①男女比率が51:49とほぼ同数であること、②外国籍社員比率が27%と高い水準であることが挙げられます。
一方で、当社の組織は、①コールセンターや再エネ施工技術者の不足、②子育て世代が最大限に活躍できる環境整備、③抜本的な業務改革を先導する高度専門技術者の確保、④カルチャー・トランスフォーメーションの中心となる新卒・若手人材の確保などの課題を抱えております。
この当社グループの組織の特徴を活かしつつ、抱える課題を解決するためには、多様な国籍・人種・性別・価値観・働き方にとらわれず、幅広くご参加頂くことが必要不可欠と考えており、当社グループとして、多様な人材を登用し活躍する体制を整備してまいります。

グローバルな人材活用
当社グループは、2000年代初頭より中国での事業展開を開始し、現在では設計サービスにおける生産設計拠点である東北部の吉林省吉林市及びアジアのシリコンバレーである広東省深圳市を中心にグループ全体で182名の社員が海外で勤務しており、外国籍従業員比率は27.0%であることから、今後もグローバルに活躍する人材を積極的に登用する方針です。
特に、新卒採用においては、留学生を中心とした海外出身の学生を積極的に採用することで、海外との連携を深めていく方針です。
また、当社グループの再エネサービスにおいては、施工人材が不足しており、採用競争が激化していることから、外国籍人材を施工技術者として育成し、事業成長に応じたキャパシティ確保に努めてまいります。
さら、当社の設計サービスおよび情報システム管掌の執行役員として外国籍(中国)の人材を登用しており、従業員だけでなく経営管理職においても国籍・人種を問わず優秀な人材を登用してまいります。
高度専門技術者の確保
当社グループは、特に住宅領域における抜本的な業務改革を推し進め、利益率の向上を図るために、これまで以上にDXを進めていく方針であり、IT分野における高度技術者の確保が急務となっております。
このような人材に参画いただくために、テレワーク活用等の柔軟な働き方を前提とし、オフィスから遠方に居住する方々に対しても採用活動を行ってまいります。
聴覚障碍者の積極的採用
当社のメンテナンスサービスにおいて、また、コールセンター業界全体としても、人材不足が常態化した課題です。
それに対する解決策として、デジタルツールをフル活用し、音声でのやり取りを必要としない「日本一静かなコールセンター」を目指しており、聴覚に不安を覚える方が安心して無理なく働ける職場づくりに取り組んでいます。
聴覚障碍者の方を積極的に採用し、10名程度 を目標に採用活動を行っており、人員を増やしながらメンテナンス業務の抜本的変革を実現してまいります。
従業員(男性・女性)の雇用状況
当社グループでは、女性が仕事と家庭を両立しつつ、その個性と能力が十分に発揮できる職場環境をつくることは企業に求められる基本的役割の一つであると考えています。
また、当社グループは当社業務の特性上、男性・女性を問わず活躍できる環境であることから、従業員における男性・女性比率は概ね同数の人員構成であります。
今後は、特に子育て世代に対する支援を手厚く提供することで、事業領域を問わず様々な挑戦を後押しし、人材の流動性を高めることで人材ポートフォリオの転換および管理職への抜擢を図ってまいります。
③人材育成方針
当社グループの中期経営計画の実現に向け、当社グループの求める人材像およびスキルセットに基づき、以下のような教育プログラムを提供してまいります。

当社で活躍するためのベーススキルに関する育成項目
当社グループにて採用・育成した人材が持てる能力を最大限に発揮するためには、信頼関係に基づき、より良い職場環境づくりに継続して取り組む組織風土が重要であると考えております。
当社グループでは、「エプコグループ行動規範」において不正や法令違反等の行為を許さない経営メッセージを伝えるとともに、全ての役職員を対象としてコンプライアンス研修を定期的に実施することで、健全な組織風土の理解浸透に取り組んでおります。
また、従業員の成長度合いに合わせた階層別の研修を実施しています。当社グループでは階層毎にテーマを定め、業務上で必要なスキルだけではなく、企業運営において守るべき労働関連法規をはじめとする法令、組織運営に欠かせない人材マネジメント、コンプライアンス・リスク管理を基本とし、そのうえで特に注力するテーマとして、当社グループにおける次世代上級管理職候補であるチームリーダーに対する研修を充実させることと、次期経営者候補である上級管理職に対するアセスメントおよび教育プログラムを導入することに注力してまいります。

事業領域別のスキルに関する育成項目
当社グループでは、事業領域毎に求められるスキルセットを定義し、それに応じた教育プログラムや資格取得支援策を実施しております。特に、エネルギー領域においては電気に関わる各種取得支援を実施しており、電気主任技術者、電気工事士第2種、電気工事施工管理技術者の取得を推奨しております。
また、住宅領域は前述したようなDXによる効率化・省力化が重要テーマとなるため、ITに関わる教育プログラムを充実させております。2024年度の取組みとして、Eラーニングを導入した全従業員のITスキル底上げを行っており、今後は勉強会の実施と組み合わせて、ITパスポート取得によるリテラシー向上、上級システム資格を取得する従業員の数も計画的に増やしてまいります。
新規事業領域においては、新たな事業の開発から実行・運用までの一連のプロセスに対応可能な人材を育てるべく、専門性の強化に力を入れております。例えば、損害保険鑑定人、BIM利用技術者、BIMプロフェッショナルプラクティショナーといった資格取得に挑戦する社員を発掘し、取得に向けたサポートを行ってまいります。
今後も、従業員個々人の能力・スキル・キャリアビジョンに応じた柔軟な学びを提供することで、従業員がより一層、個々人が持つ能力を最大限に発揮できる体制を整備してまいります。
④社内環境整備方針
当社グループは、社員一人ひとりの活躍を企業の持続的な成長の原動力ととらえ、個々人が能力を最大限に発揮できるよう、業務内容やライフスタイルに合わせた柔軟な働き方を可能にする取り組みを推進してまいります。
エンゲージメントサーベイの実施
当社グループは、当社グループで働く情熱ある社員とその家族の幸福を追求することを経営理念として掲げており、社員の能力を最大限発揮できる環境を整備することを重視しております。そこで、従業員からの声を幅広く聞くための仕組みとして、エンゲージメントサーベイを年に2回実施しております。
当該サーベイの結果は、人事制度の改定や職場の環境改善、従業員の異動等に活かしております。このほか、サーベイ結果に基づき、業務を円滑に遂行するためには社員同士の相互理解や交流機会を促すことも有益であるとの考えから、公認部活動制度の新設や地域のイベントへの参加など社内コミュニケーション活性化に向けた取組みも実施しております。
柔軟な働き方を可能にする人事制度
当社グループは育児・介護と仕事を両立したい方、傷病や遠隔地に居住等の事情のある方にも、できる限り多様な働き方を提供したいと考えており、テレワーク、時短勤務といった働き方を選択可能にしています。
上記のような事情がない従業員に対しても、「テレワーク50」という制度を設けており、年間50日までテレワークを行うことができます。
また、当社グループでは産休・育休制度を整備し、復職支援も積極的に実施しており、実績として過去10年間(2015~2024年)における産休・育休取得者は延べ83名(復職率は83.1%)となります。
さらに、ライフスタイルに合わせた柔軟な働き方が出来るよう、時間単位での年次有給取得も可能としております。今後はこれらの取組みに加え、女性活躍の推進、子育て世代への支援強化、介護と仕事を両立する社員への支援体制の整備などの各種取組みを加速させてまいります。
健康経営
当社グループは従業員一人一人が心身ともに健康な状態(ストレスに適切に対処でき、生産的かつ有益な仕事ができかつ、組織貢献が出来る状態)を維持するために社員の健康管理や健康増進の取り組みを積極的に推進し、2021年度に健康保険組合東京連合会より健康優良企業認定「銀の認定証」を取得しております。今後は「金の認定証」取得を目指してまいります。
快適な職場づくりへの取り組み
当社グループのオフィスは従業員同士のコミュニケーションを促進し、快適かつ効率的に就業できる環境を重視しております。 拠点ごとに開放的なオープンスペースを用意し、休憩室としての用途に加え、社内イベントにも活用しております。



➄指標と目標
人的資本経営推進においては、テーマごとに2025年3月末時点における状態目標を定義しております。
人材登用に関する指標と目標
人材登用のテーマにおいては、女性管理職登用率25%を目標としてまいります。当社グループの男女比率はほぼ同数であるにもかかわらず、 管理職に占める女性割合は22.8%に留まっており、優秀な女性従業員の管理職登用割合を高めることは、当社グループの生産性向上に貢献すると考えております。
当該目標の達成に向けては、働き続けたい女性が家庭と仕事を両立し、意欲的にキャリア形成が出来る仕組みを整えることが重要であると捉えております。 そこで、2023年度より女性社員が集い、意見発信を行う場として女性活躍推進活動「ルミライズ」を立ち上げ、1か月に1回、定期的な活動を行っております。
2024年度は、女性活躍推進に向けた、従業員と経営者によるタウンホールミーティングを開催いたしました。従業員の66.5%が働く沖縄に焦点を当て、従業員が抱える様々な働きづらさや会社に期待することについて、当社経営陣や社外有識者を交えて対話を行っております。


人材育成に関する指標と目標
人材育成のテーマにおいては、リーダー研修受講率100%を目標としてまいります。
当社グループでは再エネサービスに経営資源を集中させる中で、グループ会社の業務領域が拡大しており、 これらを担う管理職人材の育成が急務となっております。そのため、チームリーダーをはじめとした管理職候補者を対象にしたリーダー研修を確実に行い、 今後は次世代幹部育成にむけた上級管理職育成プログラムを充実させ、実施してまいります。
社内環境整備に関する指標と目標
社内環境整備のテーマにおいては、健康診断有所見率50%以下を目標としてまいります。
当社従業員の平均年齢が41.6歳に達する中で、従業員と組織の活性化により業績向上を図るためには、従業員の健康維持は重要な経営テーマであると認識しております。 健康経営の推進に向けて、定期的な健康セミナーやウェルネスイベントの計画等を実施してまいります。