経営者の求心力とガバナンスについて、その3

最後に、「足るを知る」についてお話ししたいと思います。

「足るを知る」とは、他と比べず、今を幸せと感じる心を持ち続けることである と考えております。

人間、上を望めばきりが無く、他と比べると、どうしても背伸びしすぎてしまい、その結果、法を犯すことにつながってしまうこともあります。

もちろん、向上心やハングリー精神は大切でありますが、それは他と比較するためのものではなく、あくまで自社や自己を成長させるために必要なものであると考えます。

そして、経営トップが「足るを知る」ために実践すべきことの一つに、ホスピタリティーを身に付けることだと思います。

私が考えるホスピタリティーとは、相手が喜んで自分も幸せ、ということであり、稲盛さんの言葉を拝借させていただくと、利他の精神に通じるものがあると思います。

相手(お客さまや社員、利害関係のない人も含めて)の利(喜び)をまず考えて、それを自分の喜びと感じることができ、最後に残ったのが自分の利、と思うことができれば、「足るを知る」を知ることができると思います。

自分の取り分を先に考えて、残りが相手という経営者では、経営もどこかでつまずいてしまうと思います。

グローバルな考え方からすると対極にある考え方かもしれませんが、日本の高度経済成長をけん引してきた経営者の方々は、このような生き方、経営を貫いてきたと感じております。

追伸

エプコもTEPCOホームテックの業績も手ごたえを感じております。11月30日には決算説明会を開催いたしますので、ぜひ、多くの皆さまにご参加いただき、業況や展望についてご理解を深めていただければ幸いです。

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経営者の求心力とガバナンスについて、その2

それではどうすれば経営者の良心を健全に保つことができるのでしょうか。

その答えの一つが、「徳を積む」、「足るを知る」ということではないかと考えております。

この二つは、社内向けのa route でも何度も紹介してきておりますが、人として真っ当に生きるために備えておくべき素養と思います。

経営者の前に、まず、その人が真っ当な人間なのか、が問われるのであって、特に上場企業であるパブリックカンパニーの経営者には欠くことができない素養であると考えます。

「徳を積む」とは、おごらない人間であるための修行といってもよいと思います。

組織を束ねるトップを社員が信頼できなければ、会社は一つにまとまるわけがありません。

故に経営トップは、おごらない人間であるために、日常生活の中で「徳を積む」努力を重ねる必要があります。

「徳を積む」には、人ぞれぞれのやり方があると思いますが、代表的な徳の積み方が掃除であると思います。

最近ではオフィスビルの管理上、清掃会社がオフィスの掃除を請け負っておりますが(エプコでも)、本来であれば、毎日働く職場を自分たちできれいに掃除するのは当たり前のことであって、職場の掃除は社員だけではなく、経営トップも自ら掃除をすることで、職場の動きや社員の仕事ぶりといった日々の気づきを得ることができます。

こういう日常的な努力の積み重ねが、人としての徳を積んでいくことにつながると思います。

特に経営者が日々掃除をすることで、経営者という立場に甘んずることなく、組織の一員としての役割を自覚することができ、自らを律することができるように思います。

ちなみに私も朝6:20分には出社して、人通りが多いごみ置き場の周りや入退出するドア付近の床や通路を、水雑巾で拭きながら徳を積んでおります。(かれこれ30年近く掃除を続けておりますが、なかなか、徳は積みません)

つづく。

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経営者の求心力とガバナンスについて、その1

昨今、経営者にまつわる話題が世の中を騒がしておりますので、本日から3回に分けて、カリスマ経営者の求心力とガバナンスについてお話しさせて頂きたいと思います。

いつの時代もカリスマ経営者の求心力とガバナンスの両立は課題になっておりまして、今回の日産自動車に係る事件もその典型だと考えております。

著名な経営者であればあるほど、そのカリスマ性は抜きん出ております。

私が考えるカリスマ経営者の優れた点は、求心力があり、危機突破力があり、イノベーション力があり、改革力があり、推進力があり、経営に関する明確なヴィジョンを示し、組織を1つにまとめ上げて、即断即決で意思決定して、目標に向かって会社全体を前進させる力があります。

一方で、成果を上げ、永く経営に携わり、ブレない姿勢で経営にあたるカリスマ経営者に対しては、組織としてのガバナンスが効かなくなるデメリットもあるように感じます。

ちょっとおかしい、規程違反ではないか、と感じることがあっても、実績のあるTOPに物が言えず、内部統制や監査の機能が効かず、結果として法を逸脱してしまう事案もしばしば発生しております。

また、法を犯さなくても、意思決定の判断基準が独創的になりすぎて、判断ミスを重ねる結果も散見されます。

だからといって、経営トップを定期的に代える仕組みを作れば問題が解決するかといえば、また違う問題も発生してしまい、カリスマ経営者が代わった途端に業績が低迷してしまう企業もこれまで数多くありました。

こう考えると経営者の求心力とガバナンスの両立には名案がないのが現実であり、最終的には経営者の良心が健全であることが、この課題を解決する有効な手段であると考えております。

つづく。

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