住宅産業の脱炭素化とデジタル化を通じて
持続可能な社会の実現に貢献
当社は、設立より30年以上にわたって住宅のライフサイクル全般に関わる領域で事業成長を果たしてきました。2002年の上場以来、増収増配を継続し成長を続けておりますが、当社の持続的成長を支えているのはESG(Environment:環境、Social:社会、Governance:ガバナンス)を根幹に位置付けた事業運営であり、サステナビリティを重視した経営であると自負しております。
地球温暖化による影響は年々深刻化しており、それに伴う自然災害が国内外で増加している中、持続可能な社会の実現に向けた事業活動を行うことの重要性が一層高まっております。
そうした中、当社グループは、持続可能な社会の実現を果たすために、パーパス(存在意義)として「HCDs(Housing Carbon Neutrality Digital Solutions)」を新たに掲げて、当社の3つの事業活動(BIM・CRM・電化サービス)を通して「住まい・暮らし・地球環境をデジタル技術で支えます」というメッセージを、HCDsに込めて打ち出しております。
2050年までの30年間の礎を築くために、「建築DX×脱炭素」を軸に、住宅産業の変革を実現することを目指しており、具体的には、次の3本柱を軌道に乗せたいと考えております。
1つ目はTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)対応です。
TCFDとは企業の気候変動への取組みや影響に関する財務情報についての開示のための枠組みで、東京証券取引所のプライム市場上場企業は、2022年4月よりTCFD提言に沿った開示が求められることになります。
TCFD提言では、企業に対して自社の気候関連リスク・機会を評価し、経営戦略及びリスク管理に反映させ、その財務上の影響を把握・開示することが要請されています。プライム市場上場企業は、当該情報開示に対応する中で、温室効果ガスの排出量を算出し、脱炭素社会の実現に向けて温室効果ガスの削減計画を立案し、計画を実行することが求められております。
特に住宅産業はすそ野が広く、営業・設計・資材調達・現場施工・入居後の維持管理と、各スコープにおいて温暖化ガスの排出量を数字で把握し、削減計画を示す必要があります。これは既存の建築設計システムでは算出しづらい内容ですが、BIMクラウドサービスを活用することで、TCFD開示に必要なデータを住宅関連企業へ提供するサービスを推進してまいります。
2つ目はストック住宅(既存住宅)市場の活性化とゼロエミッション対応です。
日本のストック住宅総数は約5,600万戸あり、このストック住宅の省エネ化・再エネ化なくして脱炭素と防災社会の実現はあり得ません。
ストック住宅の高断熱化(樹脂サッシなど)・高効率設備化(エコキュートなど)・再エネ化(太陽光パネル)・EV化を実現するにはイニシャルコストが必要で、ストック住宅の脱炭素化に向けた大きな課題でもあります。
この課題解決にはエプコが手掛けるCRMクラウドサービスにより家歴データを分析し、経済効果が見込めるストック住宅を抽出して、TEPCOホームテックのエネカリモデル(初期費用ゼロ円で太陽光発電システムなどの電化機器を設置し、利用料でお支払い頂くサブスクモデル)との相乗効果で、ストック住宅のゼロエミッション化と高付加価値化に貢献し、中古住宅市場の活性化へつなげてまいります。
3つ目はTEPCOホームテックによる脱炭素と防災社会の実現に向けた電化戦略です。
脱炭素と防災に関する取り組みとしては、東京電力ホールディングスが電化戦略を打ち出しており、TEPCOホームテックのエネカリモデルを軸にした電化サービスを家庭部門を中心に推進していく方針です。
一方で、TEPCOホームテックとしては、各企業がカーボンニュートラル(CN)への取り組みを加速している流れを踏まえて、CNソリューションを住宅事業者などの企業へダイレクトに提供するコーポレートPPAといったビジネスモデルを構築して、住宅事業者と連携した新たな収益機会を創出していく方針です。これにより脱炭素と防災社会の実現に貢献する電化事業を、東京電力グループ全体で推進してまいります。
また、前述した事業変革を果たし、持続的に成長し続けていくためには、社員や組織の高度な自律性と成長が不可欠です。当社グループは、当社グループで働く情熱ある社員とその家族の幸福を追求することを経営理念のひとつとして掲げており、人権を尊重し、国籍・性別・年齢等を問わず、多様性(ダイバーシティ)を重視した役職員の登用を行い、建築DXの推進に適合した社員教育の充実を図るとともに、全ての従業員が能力を最大限に発揮できる職場環境づくりを推進してまいります。
加えて、前述した事業変革を実現するための仕組みづくりとして透明性・公正性を担保したコーポレート・ガバナンス体制の充実を図るとともに、社内外のステークホルダーとの対話を積極的に進めることで、スピード感と実行力をもって住宅産業の脱炭素化を通じた持続可能な社会の実現に挑戦してまいります。
今後とも皆さまのご理解とご支援の程、よろしくお願いいたします。
2022年3月
株式会社エプコ
代表取締役グループCEO